岳人憧れの山、日高山脈の1839峰に行ってきた。カムイエクウチカウシ山からペテガリ岳へ続く中日高の主稜線上にあるヤオロマップ岳から、西に派生した稜線上にひときわ目立つ、孤高の鋭鋒が1839峰である。実際の標高は1842mだが、修正もされず慣れ親しんだ名前が今も用いられている。
3年前にコイカクシュサツナイ岳に登って初めて対面して以来、何時かは登ってみたいと思ってはいたが、ハイ松と岩稜の続く狭い稜線を歩く困難さにためらいもあった。天候不順の続く今夏、一週間ほど天候の安定が予想された今回ついに挑戦する機会を得た。
8/8(金) まだ暗い3時に自宅を出発、7時50分札内ヒュッテ着。登山届けに記帳し、沢装備を整えて出発しようとする時に、スズメバチが車内に入り込む。逃げ出すの待つが20分ほど経っても一向に逃げ出す気配がないので、やむなく退治した。気持ちのいい出発ではなかった。
トンネルを抜けてコイカクシュサツナイ川出会いに着くと、2台の車が駐車されていた。8時半入川。川原は広く、水はぬるい。堰堤を越えて、最初の函は右岸の巻き道を、次の函は左岸をへつる。水量は少なくて歩きやすいが、約25kgの荷が肩に食い込む。2時間弱で上二股に着き、ここから正面に見える急峻な尾根(夏尾根の頭)に取り付くことになる。
下山中の夫婦が休憩していた。2時間ほど前に男性1人が登って行ったと言う。夏尾根の頭に2つしかないテン場の一つは確保できそうでまずは一安心。ここで沢靴から登山靴に履き替え、沢靴はデポする。稜線上では水を得ることはできないのですべて担ぎ上げなければならない。川水を3?補給し、ペットボトルの水と合わせて計7?。さらにスポーツドリンク等計4.5?。ザックの荷はさらに重さを増す。これからの急登に果たして耐えられるのか?
背丈を越える笹薮を越えるといよいよコイカク夏尾根の急登開始である。ここは日高でも有数の急坂だ。最初は10分ほど登って、数分立ったままで休んでいたが、すぐに耐えられなくなる。腰を下ろして休む回数はどんどん増え、何度休んだか数知れない。トマト、バナナ、飲み物などで頻繁にエネルギーを補給し、ばてないように心がける。やがて傾斜が若干緩んで、1305mのテン場に着き大休止。ここからは右側がスッパリと切れ落ちた狭くて垂直に近い岩稜となる。
ロープは張ってあるが頼りにならない。岩にしがみつき少しずつ慎重に体を持ち上げる。疲労困憊だが、ここまで来たら諦めるわけにはいかない。まだ時間はたっぷりあるし、3年前の経験と記憶があるから、あせらずゆっくりと先に進む。15時過ぎについに尾根の上に飛び出た。見覚えのある山並みと1839峰が目の前に現れた。今日の予定を何とかクリアして一安心。
夏尾根の頭には、一人の男性(大阪)がテント内で寛いでいた。挨拶をして、空いているもう一つの空地にテントを張り、寝床を用意する。早めの夕食を済まして、焼酎をちびりちびりやっていると、17時頃になって、一人の男性(東京)が到着し、隣にテントを張らせてくれと言う。狭いテン場なのでくっつけあうようにして二つのテントを並べた。
21時頃、強烈な風が吹き荒れてテントが押しつぶされそうになるが、1時間ほどで治まった。熟睡はできずうつらうつらしながら朝を迎えた。
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